第256回月例薬学セミナー
(平成28年度第6回)
日 時:平成28年10月24日(月)15時~16時30分
場 所:静岡県立大学小講堂
世話教室:臨床薬効解析学分野
対 象:大学院生、学部生、教職員、学外の方の参加も歓迎致します。
講師:石渡 俊行 先生
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センタ―老年病理学研究部長
老年病理学研究チーム・チームリーダー
高齢者がん研究グループ・テーマリーダー
題目:膵癌の幹細胞と上皮間葉転換-新たな治療標的としての可能性-
概要:
医学、医療の進歩にも関わらず膵癌の5年生存率は10%以下であり、超高齢化社会を迎え膵癌は、年々増加している。癌幹細胞(Cancer Stem Cell/CSC)は、自己複製能と多分化能を有する少数の癌細胞である。癌幹細胞は抗癌剤や放射線に耐性で再発に関与し、移動能も高く癌転移に重要な役割を果たしている。癌幹細胞に上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition/EMT)がおこると、移動能がさらに亢進し血管に侵入して転移が促進されると考えられる。
我々は、CSCマーカーとされるnestinの発現を抑制することで 膵癌の遊走能が低下し、免疫不全マウスの癌転移が抑制されることを明らかにした。FGFR-2のスプライシングバリアントには上皮細胞に発現するFGFR-2 IIIbと間葉系細胞に発現するFGFR-2 IIIcがある。膵癌細胞のFGFR-2 IIIcを抑制すると、免疫不全マウスの癌転移が減少した。次に膵癌細胞にESRP1を過剰発現させ、スプライシングを調節しFGFR-2 IIIbを増加させると、癌の増殖と転移が抑制された。膵癌の癌幹細胞と上皮間葉転換を標的とした新たな治療法の可能性につき紹介したい。
問い合せ先: 静岡県立大学薬学部臨床薬効解析学分野 伊藤 邦彦