Q&A

新しいものは,一番上に追加されていきます.

2019年度 (6月26日 更新)

Q.無機化学が難しすぎます.

A.
高校化学で無機化学を楽しいと思った人はそれほど多くはないでしょう.覚えた者勝ち的ですから.
薬剤師の国家試験も膨大な知識を覚えなければならないので,似たようなものでしょう.
なんのために勉強するか→単位を取るため→その繰り返し.いいんじゃない?
良い点をとるかどうかは各自の裁量ですが,学習したいというモチベーションが少しでもないと辛いかと思います.
自分も大学のときには,無機化学は全く興味もなく,つまらなかったことを覚えています.
やはり,講義がつまらないというご批判には,十分反省をします.申し訳ありません.
私のことが嫌いでも,「無機化学」は嫌いにならないでください.
(もしかして,このジョークもう通じない?) 参考:前田敦子さんの名言


Q.SO3とSO2における硫黄原子の混成軌道がわかりません.

A.
イオウは,リンと同じくd軌道が存在するので,このd軌道を利用することができます.
動画に考え方をまとめましたので,参考にしてください.
なお,この動画は以前に質問に答える形でアップした動画と同じですが,もう一度,シェアしたいと思います.
(19:21)
イオウを含むいくつかの化合物を題材に混成軌道を説明していますが,自分の見たい化合物に飛べるよう,概要欄にインデックスがつけてあります.


Q.HSO3-とHPO32-が等電子関係である理由は?

A
. 等電子関係にあるための条件は,構成原子数が等しいことと,価電子数が等しいことです.ただし,価電子数を数える際に,対象化学種がイオンの場合には,そのイオンに伴う電子を加減しなければなりません.すなわち,チャージが−1であれば,全体に1電子を加え,チャージが+1であれば,全体から1電子分引きます.
以上の観点から,質問にあった2化合物を見てみます.
まず,構成原子数は,両方共5原子であり,条件を満たしています.
次に,価電子を数えます.
まずをHSO3-数えます.Hが1個,Sが6個,Oが6個で酸素原子3つあるので6・3=18個,さらに,マイナス1のチャージがあるので,電子を1個足します.よって,総価電子数は,1+6+18+1=26個となります.
次に,HPO32-を数えます.Hが1個,Pが5個,Oが6個で酸素原子3つあるので6・3=18個,さらに,マイナス2のチャージがあるので,電子を2個足します.よって,総価電子数は,1+5+18+2=26個となります.
以上より,構成厳守数が同じで,総価電子数も同じなので,両者は,等電子関係にあるといえます.


Q.塩化チオニルの硫黄原子の混成軌道がよくわかりません.

A. 
sp3混成です.考え方を動画にしてありますのでわからない人は動画を参照してください.混成軌道は基礎化学の範囲ですが,無機化学でも,試験に出しますので,しっかり理解しておいてください.塩化チオニルの混成軌道の考え方は二通りあるので,動画2つに分けました.この動画は,最初の質問者に対しての解答として作成したものなので,その点ご了承下さい.
  
動画1(04:33)  動画2(04:03)
また,塩化チオニルは,Lewisの酸としても,塩基としても機能するということも重要なことです.Lewis acid, baseも試験範囲です.


Q.CN分子の分子軌道エネルギー準位図で,非結合性軌道は考えなくてよいですか.

A.
一酸化炭素の分子軌道エネルギ―準位図において(テキスト),非結合性が考慮されています.これは,炭素と酸素とのエネルギー準位が比較的大きいことによる考え方です.(実際にはそれぞれが相互作用するので,非結合性ではない).一方,課題では,原子番号が1つだけ異なる組み合わせの二原子分子なので,一酸化炭素のように,大きくエネルギ―準位がことなるわけではないので,sとpとの相互作用を考えればよいということになります.図だけから判断できないのでは,との質問もありましたが,非結合性の軌道であれば,エネルギー準位は変わらないことから,課題中のCN分子軌道エネルギー準位図でエネルギー不変の軌道が存在しないことから,非結合性は考慮していないことになります.
 参考までに,別のテキストにおける一酸化炭素の分子軌道エネルギー準位図を示します.(ハウスクロフト著,ハウスクロフト無機化学(上),東京化学同人)小鹿の図書館に在庫あります.


Q.試験問題が例年解説されると聞いたのですが,今年も例年通り解説されますか.

A.
昨年の授業評価でもあまり解説しないでほしいという意見が多くありましたので,お知らせしない予定です.
今年度はあまり質問がないので,もし質問があれば,ここでシェアしたいと思います.


Q.章末問題3章の9番で,解答に点線で構造式を記述していますが,なぜ点線なのですか.(2019年中間試験(仮)にもある)
  

A.まず,上記解答のp.2はp.52の誤りですね.点線は,非局在化の広がりを表しています.図3.19に二酸化窒素の共鳴式があります.この2つを合わせると,全体的にπ電子が非局在化しているということになります.右のN-O結合も左のN-O結合も,トータルとしてみれば区別ないということですね.これを一つの構造式で表記する方法として,解答にあるような表記法もあるということです.実線はσ結合,点線は,非局在化したπ電子ということです.ただ,この表記だといくつのπ電子があるかがわからないということが欠点です.そのため,電子は非局在化しているにもかかわらず,電子が局在化していて,かつ,電子の数がわかる構造を好んで書きます.窒素上に不対電子があり,この不対電子が対になるように窒素−窒素間に単結合をつくるということがまず第一です.図3.19のN-Nを単結合で結ぶと,その共鳴式を複数書かなければいけません(4つ).まあ,4つ書けば済むのですから.あと,分子形を意識するなら,直線分子ではないので,解答とは違いますね.
図3.19


Q.アニリンの窒素原子の混成軌道はsp3かsp2

A.
紙の上で書けば,sp2とsp3のどちらも可能と言っていいでしょう.ジアゾ化の時のようにローンペアが反応していくときにはsp3と考えても間違いではありません.ただし,アニリンは弱塩基です.その理由は,アニリンの共鳴式を書けばわかります.一度書いてみてください.5つ書けますか?そのうち,2つはベンゼン環の二重結合の位置の異なるもので,電荷分離のないもの,残り3つは共鳴により正電荷が窒素上に,負電荷がベンゼン環のオルト位とパラ位にある電荷分離した状態です.よって,電荷分離しているかいないかで,紙の上で書く場合には,sp3とsp2の両方と解釈できるわけです.このように芳香環があるときは要注意です.とにかく,アニリンは弱塩基で,それは,ローンペアがベンゼン環に流れ込んでいるからです.
混成軌道でも,以下のような話には要注意です.(2や4は有機化学で芳香族性を学ぶ必要あり)
第100回薬剤師国家試験の問題です.



Q.アミンのニトロソ化反応と,生体内での反応との関連性がよくわかりません.

A.
ハムやソーセージの発色剤として,亜硝酸ナトリウムが使用されています.亜硝酸ナトリウムが胃中に入ればニトロソニウムイオンが生成する可能性があります.そこに,第二級アミン類,例えば,魚類中に存在するジメチルアミンが反応すればN-ニトロソジメチルアミンが生成し,これに発がん性があるという研究が1950年代後半に報告されてから,ニトロソ化合物とがんの発生に関する研究が行われてきました.特に,ニトロソ化合物と胃がんとの関連を指摘する研究者が多かったのも事実です.しかし,実際には,そのあたりの関連性が事実なのかどうかはまだまだ議論の余地があるところである,というのが現状ではないかと思います.現在使用されている発色剤に関しては,食品衛生法で食肉製品で用いられる亜硝酸根残存量は70ppm(1kgに対して0.07g)以下と使用基準がしっかり定められていますから,食品摂取量から考えて問題になる量ではないように思います.厚生労働省は,「生体内でのニトロソ化合物の生成と胃がんとの関係」ということで以下のような見解を公表しています.
(以下,厚労省の見解)
生体内で、硝酸塩から発ガン物質であるニトロソ化合物の生成の可能性があることから、胃がんと硝酸塩(または亜硝酸塩)の摂取の関係についていろいろな研究がされています。
胃がんと硝酸塩の関係については、関係があるとする研究もありますし、関係が認められないとする研究もあります。大部分の研究は結論が出ていませんし、むしろ硝酸塩の摂取量が増えると、胃がんの発生率が低くなるという逆の相関を示す研究結果もあります。
一般的に、がんについての疫学研究は、胃がんの原因要素がいろいろあることや、発病する場合でも、摂取してから、発病するまで時間がかかることから、結果が得にくいようです。
野菜は硝酸塩の主要な摂取源ではありますが、ビタミンCなどの保護因子も含むため、野菜を大量に摂った場合には、それに含まれる硝酸塩と同じ量の硝酸塩を添加物等として摂取した場合に比べて、胃がんのリスクは低くなると思われます。(以上,厚労省の見解)
化学的反応としては,重要であるので,ジアゾ化と合わせて,しっかり理解しておいてください.



Q.Youtubeの動画は今後もアップされますか.

A.そ
うしたいと思いますが,視聴者数が少ないことを考えると,あまり需要がないと思われます.
(単純につまらない,見る価値のない内容だという評価も多いらしい)
しかし,視聴してくれる学生もいるので,その点は配慮したいと思います.


Q.章末問題3章の2番で,解答に結合角度が書いてありますが,この角度は覚える必要はありますか.

   

A. 115°という数字を覚える必要はありません.ニトロニウムイオンは直線型ですから180°は自明ではありますが..
亜硝酸イオンは折れ曲がり型,ニトロニウムイオンは直線型ということを理解すればよいかと思います.すなわち,結合角は,ニトロニウムイオンのほうが大きい,ということですね.
これが理解できれば,次の質問はどうですか?
What is the order of bond angles NO2+, NO2, NO2-?

The answer is: NO2- < NO2 < NO2+
NO2は窒素上に不対電子が,NO2-は窒素上にローンペアが存在します.よって,これら電子が入っている軌道と,2つのN-O間軌道の反発は変わってきますね.ローンペアの方が電子数が多くて反発が大きいと考えれば,NO2-の結合角が一番小さいという事になります.
NO2の結合角は134°です.この角度も覚える必要はありませんが,結合角の順番が答えのようになる理由は大事です.



Q.章末問題5章の4番で,ホウ素の水素化物の代表的なものを書けという問題がありますが,解答にあるようにジボランと水素化ホウ素ナトリウムの2つだけが書かれていますが,これだけでいいですか?

A. 
テキストに登場するホウ素の水素化物は,たぶん解答にある2つだけだったと思います.代表的な例ということであれば,この2つに代表されるかと思いますので,いいんじゃないでしょうか.期末試験でも,この2つ以外のホウ素の水素化物は題材にしていません.
 そもそもボランというのはホウ素の水素化合物の総称で,典型的なものとして,B2H6, B4H10, B9H15などがあります.その中でジボランは最も単純な水素化物です.この性質や結合の特徴的なことを理解しておけばいいかと思います.狭義にはボランといえばBH3を指すことが多く,これは不安定で二量化したしたものがジボランです.興味がある人は,多くの大学で使われている無機化学のテキストを読んでみると良いでしょう.(たとえばコットン著基礎無機化学).私はカラフルなハウスクロフト著無機化学(上)(下)が好きです.(なぜか看護学部の図書館にある)ただし,受験期に卜部さんの「化学の新研究」を読んで裏目に出るみたいなことにならないよう.


Q.SO2(二酸化硫黄)の硫黄原子がsp2であるのは?

A.
以下の考え方を見て下さい.
 
すなわち,混成に組み入れられなかった軌道に存在する電子をπ電子として利用できるかどうかが決め手です.
 もう一つは,硫黄にはd軌道があるので,そこを使おうと思えば使えるという点ですね.
ちなみに,二酸化硫黄は,電子供与体としても,電子受容体としても機能します.



Q.混成軌道がよくわかりません.

A.
講義資料にある演習問題をやってみてください.


Q.1回目のレポートをB5サイズで出してしまいました.

A.
とりあえず,第一回は見逃します.二回目,三回目は,指示通りでないものは,1点とします.なお,答えだけが書いてある,というようなレポートになっていないものに関しては,評価しません.

----------------------------------------------------------------------------


2018年度
(7月10日 更新終了)

Q.トランス効果の説明をするときに,配位子交換反応が起きますが,このとき中間体は存在しますか.

A.
4配位化合物なので,配位子が交換される際には必ず,配位数が1つ増えた反応中間体が存在します.説明に用いた図では省略してあるが,会合機構による配位子交換が起きています.その中間体は,会合機構のとき説明した形の中間体です.この中間体の構造は重要です.


Q.tetraammineplatinum(U)のammineをchloro基で一つ置換した後、またchloro基で置換していく反応で、このときトランス効果でchloroのトランス位にあるammineが置換されると説明をうけましたが、labileな配位子であるchloroが再び置換されるということはおきないのでしょうか?トランス効果はammineのinert性より強いということですか?

A.
chloroが再びammineで置換されることは,当然あります.しかし,この場合は原料に戻るだけ.トランス効果は,置換反応が起きるという前提で,置換反応が起きるのなら,どの配位子が置換されるかを議論しています.よって,置換されにくいammineが置換されやすいchloroで置換されるのは違和感があるかもしれませんが,置換されないわけではありません.(ただし,反応速度は遅くなるはず).反応を進行させるための工夫として試薬濃度を高くするとかがあります.


Q.dx2-y2,dz2はの名称はなんていっているんですか.
A.
dx2-y2: d x squared minus y squared, dz2: d z squared
5つのd軌道は図示(位相を含めて)して,名称も書けるようにしておいてください.かつt2gとegのグループ分けもできるように.


Q.t2gとegというグループ分けで,tとかeとかって何ですか.

A.
t2gは三次元方向(t)に電子雲が広がり,2回回転軸(2)があって,電子雲の位相が対称(g)であるという三重縮重しているグループ,egは二次元方向(e)に電子雲が広がり,電子雲の位相が対称(g)であるという二重縮重しているグループ.群論というのを学ばなければならないので,とりあえず,そういうグループ名であることを知っておけばよろしいかと思います.大学院に進学する人は知っていてよいかと思います.物理化学かなにかで学習すると思います.


Q.Fe2+はなぜ,d6錯体なのですか.d4錯体ではないのですか.

A.
これは,構成原理から考えた結果,d4錯体と考えたのだと思われます..鉄の基底状態の電子配置は,Fe[Ar]3d64s2です.構成原理では,軌道のエネルギー準位が3d<4sであるので,4sから電子が埋まり,ついで3dに電子が埋まる,と考えました.となると,エネルギー順位の高いd軌道に入っている電子からとれていって,d44錯体になる,と考えたのでしょう.しかしながら,構成原理を,イオンの電子配置に持ち込むと誤りです.
(重要)カチオンの電子配置を得るには,まずs電子を,ついで,d電子を必要な数だけ取り除けばよい.すなわち,Fe2+では,また,有効核電荷からも,同様の議論ができます.これを,3d電子と4s電子で計算してみるとよいです.有効核電荷は,原子核のプラスをどれだけ感じるか,ということなので,数値が大きいほど核電荷を大きく感じて,引きつけられる力が大きいと考えられます.実際に,テキストp.20のスレーターの規則を使って計算してみます.(4s電子)遮蔽定数S=(0.35×1)+(0.85×14)+(1.0×10)=22.25,よって有効核電荷は26-22.25=3.75 (3d電子)遮蔽定数S=(0.35×5)+(1.0×18)=19.75,よって有効核電荷は26-19.75 =6.25.この計算より,3d電子より4s電子の方が有効核電荷が小さいので,とれやすいということになります


Q.スーパーオキサイドアニオンラジカルと一酸化窒素からできる活性窒素種の生成は速い,ということですが,瞬時に反応してしまうということですか.

A.
質問の趣旨は,スーパーオキシドアニオンラジカルが生体内で産生され,また,それを不均化反応でSODが消去するメカニズムがあるので,一酸化窒素との反応でどちらが速いのかを知りたい,ということでした.
スーパーオキシドアニオンラジカルと一酸化窒素とが生体内で反応していることは,スーパーオキシドアニオンラジカルを分解する酵素SODを一酸化窒素が産生されている組織に加えると一酸化窒素の寿命が伸びることから明らかにされました.スーパーオキシドアニオンラジカルと一酸化窒素との反応では,ペルオキシナイトライト(ペルオキシ亜硝酸イオン)が生成します.この反応の速度は6.7×109M-1s-1と極めて早く,SODとスーパーオキシドアニオンラジカルとの反応速度2×109M-1s-1よりも速いので,反応速度だけ考慮するならば,生体内で一酸化窒素とスーパーオキシドアニオンラジカルが共存すると,必ずペルオキシナイトライトが産生されるということになります.
現時点では,ラジカル種同士の反応なので,極めて速やかに反応が進行すること,また,生成したペルオキシナイトライトの構造から,一酸化窒素の窒素上の孤立電子が反応することになるため,新たに窒素−酸素間に結合が形成されるということを抑えておいてほしいです.試験では,新たに酸素−酸素間の結合が形成されるように構造を書いてまちがう人が多いです.
具体的な反応速度の数値を知りませんでしたので,以下の書籍から上記データを引用しました.
NO一酸化窒素,吉村哲彦 著,共立出版


Q.期末試験の公開問題で,答えるポイントはなにかありますか.

A.
本年度の期末試験における公開問題は以下のとおりです.

デンプン溶液に冷時ヨウ素を作用させたとき青紫色を呈する反応は,
ヨウ素デンプン反応として知られている.また,ヨウ素をベンゼンに溶解させたときには溶液が赤く着色する.これらの発色の理由を説明せよ.

いずれも,同じキーワードで説明できる現象です.すなわち,キーワードは,電荷移動錯体です.
錯体の着色を説明できるは,多くはd-d-遷移という概念で説明できます.もう一つはCTです.
確かに記述式というのは,どこまでを答えればよいかは難しいところですが,せっかく問題を公開しているので,ここで得点をしっかり押さえたい人は,回答を準備しておきましょう.いかにに適切に要領よく説明できるか,ということは,この試験に限らずこれから必ず求められるスキルです.
さて,ポイントですが,講義時にも言いましたが,「電荷移動錯体を形成するから」というだけでは不十分です.電荷移動錯体には,必ず,ドナーとアクセプターがあり,ドナー分子でも,どの部分がドナーとなっているかなどは必ずコメントする必要があると思います.また,色が変わるのは,吸収する色の波長が錯体を形成する前と変わっているので色が変化するわけですから,長波長側にシフトしたのか短波長側にシフトしたのかぐらいのコメントはあっていいんじゃないかと思います.正確な波数などはいりません.
以上の観点から,文章にしたらどうでしょう,というのがアドバイスです.また,そこに図を入れて,伝わりやすくする,といった工夫は各自で考えればよいかと思います.単に,キーワードを述べるだけ,あるいは図を書くだけ,では,・・・を論ぜよ,というレポートで図だけ書いて,何も論じていないのと同じになってしまいます.次に繋がるような学習をしていって欲しいものです.(そんなにたくさんの配点があるわけではありませんから,その点申し添えます)


Q.章末問題第6章の1番で,Cl-がchloroとなっていますが,chloridoでもいいですか.また,電荷を有する錯体の命名は,講義でやっていないように思いますが,テスト範囲ですか.

A.
配位子の英語名に関しては,現在,旧名と新名が混在して使われている状況だと思います.ですので,どちらでも大丈夫です.ちなみに高校の教科書では,すべて新しい命名法で記述されていますので,chloridoですね.なお,電荷を有する錯体の命名に関してはテキストあるいはプリントを見てください.[ ]でくくった錯体部分がプラスチャージの場合は,中性の錯体の命名法と同じで,あとは,通常の無機塩の命名法に従い,陰イオン名を錯体名のあとにつければよいです.難しいのは,錯体部分が負電荷のばあいです.これは特殊です.問題の1(c)と1(d)がそれに該当しますが,金属名が特殊な変名をします.プリントを見てください.中性あるいは陽イオン性錯体の命名以外はテストの範囲外とします.テキストの修正に関しては,著者に連絡しましたが下の通りの回答を頂いています.






Q. ジアゾ化の反応機構で,構造式にすべての電子を記述した形で反応式を書いてほしいです


A.講義資料に,各原子に存在するローンペアを含めて構造式を書いたものを載せました.ここからでも見れます.pdf


Q. Q&Aに、期末試験の内容が変わると書いてあったのですが、昨年の質問なあるような、出題内容概要のように詳しくは教えてもらえないということですか?

 
A.希望が多ければ考えますが,現状を見ると,例えば掲示板のお知らせを見る人は3分の一以下でこのような現象は初めてです.
また,講義動画を見る人もあまりいないので,たぶん出題概要などを作っても需要はないのではないかと推測します.講義に対する興味,理解を喚起しようと努力してはいますが,こちらの講義の仕方が良くないのでしょう.力不足で申し訳ありません.
なお,昨年の講義において,試験問題をどこから出すか事前に教えるのはつまらない,との意見が複数ありました.しかしながら,限られた時間で,次に繋がる化学的センスを持ってもらうためには,これも一つの方法かとは思います.
ちなみに,毎年,試験問題の出題文言まで告知して出題する問題を作成していました.当然ほとんどの人が正解を書くかと思いきや,正解を書く人は半数程度ですので不思議です.(6月1日現在)


Q.過去問は解いておいた方がいいですか?
 
A.時間と興味があれば解いておくほうが良いと思います.
また,過去問以外に無機化学ホームページにアップしている問題は必ず解いておいてください.
(講義動画の問題も含めて)



Q. レポートの参考文献にWikipediaを使ってもいいですか.

A.参考文献にはWikipediaは引用しない方がよろしいかとおもいます.Wikipediaは不特定の多数の人が編集可能なため,信用が置けない,というのが,世間一般に言われている,Wikipediaをレポートの参考文献に挙げてはいけない理由かと思います.確かに,時に誤った記述があるのも確かです.人にもよりますが,Wikipediaをレポートの参考文献として認めない,という人の方が現状多いかと思います.よって,レポートの中で,参考文献として記述するのは避ける方がよろしいかと思います.しかしながら,Wikipediaは,ある意味,人類の英知の集成でもあるので,これを利用しない手はないでしょう.ただ,記述が正しいかどうかを判断できない状態で使うのは危険,ということですね.しかしながら,Wikipediaの方針として,出典を明記しなければならないことになっていますので,Wikipediaの下部についている参考文献のところは使えると思います.うまく使っていけば,有用なツールです.私は使えるものは使ったらよいかと思うのであまり気になりませんが,現状では,表立った形でレポートの記述にはせず,自分の理解のための一つのツールとしておくのがよいと思います.


Q.Youtubeの動画は今後もアップされますか.


A.そうしたいと思いますが,視聴者数が少ないことを考えると,あまり需要がないと思われます.
(単純につまらない,見る価値のない内容だという評価も多いらしい)
しかし,視聴してくれる学生もいるので,その点は配慮したいと思います.


Q.無断欠席がある場合,期末試験は受けることはできませんか.

A.
原則,2/3以上の出席があれば試験は受けられるわけですから,そのルールに従います.2週以上の連続欠席に関しては,試験は受けられますが,合否の判定は保留します.また,欠席届をださない欠席や,出欠管理で,空欄があるものは,各自の責任においてチェックすることになっているので,期末試験での加点等の考慮はしません.レポート未提出のものは,期末試験を受けることは構いませんが,来年,再履修してください.


------------------------------------------------------------------
2017年度

期末試験が近くなって,期末試験関連の質問が多いので,参考にして下さい.


Q.期末試験 出題内容概 p.5の大問7番 問2で,図示問題とありますが,何を勉強しておけば良いですか.

A. プリントにも書きましたが,5つあるd軌道の形状を模式的に図示できるようにしておくことです.ただし,形状のみではなく,位相を区別して書けるようにしておく必要があります.ただし,5つすべてを書くわけではありませんので,どの軌道を書けばよいかは,問題をみて判断して下さい.2013年期末試験大問7番問1のような問題です.やってみて下さい.

Q.アルミニウムと薬剤とのキレート形成に関して,できたキレートの物性が違うことが,副作用の違いになるのですか.

A. 一般に,キレートを形成すると,そのキレートが水溶性になる場合と,不溶性になる場合があります.例えば,腸管内で,不溶性のキレートが形成されれば,その薬剤は吸収されず,便として体外に排泄されます.ニューキノロン系の抗生物質がその例です.よって,服用しても,抗生物質が吸収されず,薬効を発揮できません.ただし,アルミニウムは本来吸収されてはいけないものですから,その点においては問題がありません.しかしながら,クエン酸とのキレートは水溶性のキレートが形成されてしまいます.その結果,本来旧主婦されないアルミニウムの血中濃度の上昇が見られる場合がありますキレートを形成する物質の物性に起因するので,詳しくは他の科目で学習することともいます.

Q.期末試験に講義動画で説明していたスピン禁制の話は理解しておく必要が有りますか.

A. 現時点では必要ありません.d5錯体は,低スピンならd-d遷移可能なので,d1-d9錯体でd-d-遷移が起こる,といっても間違いではありません.

Q.期末試験 出題内容概 p.5の大問7番 問4.で,テキストp.154章末問題14番 と書いてありますが,これは,そのまま出るのですか.

A. はい.ただし,記述式ですので,自分では書いたつもりでも,相手に伝わらない可能性があります.講義動画の問題演習15で採点基準を説明しましたので,あとは,自分で理解して書けるようにしておけば良いでしょう.ただっし,錯体の着shホクの理由のすべてをd-d-遷移で説明できるわけではありませんから,解答を作成する際には,「錯体の着色の理由の 多くは d-d-遷移で説明できる」というように,多くは,としておく必要はあるかと思います.

Q.期末試験 出題内容概 p.1に「Liの水素化物の性質は?」とありますが,講義ノートやプリントにないのですが.

A. テキストに書いてあります.リチウムは,1族の中でもサイズが小さくて性質も異なることが多いですが,1族共通の性質もあります.テキストp.109の(b)アルカリ金属の水素化物 のところに,「アルカリ金属の水素化物は,・・・・,おもに還元剤として用いられる」すなわち,ヒドリドを放出する性質があるので,還元剤として用いることができるのです.

Q.期末試験 出題内容概説に書いてあることをやっておけばテスト対策は大丈夫ですか.

A. はい.

Q.インターネットで三臭化ホウ素を調べたところ,“脱メチル化”というキーワードが出てきました.レポートの課題にあった,BBr3BF3NMe3との反応を考えるときに,トリメチルアミンNMe3の脱メチル化は考慮しなくても良いのですか.

A. たしかにBBr3は,脱メチル化試薬として,よく使用されます.ただし,脱メチル化できる相手は決まっていて,下図のように,エーテル結合の状態のメチル基を切断します.詳しくは,有機化学で取り上げられるので,そこで学習してください.今回の場合,脱メチル化を考慮する必要はありません.このようなことに着目できるのは素晴らしいことですね.


Q.試験勉強の仕方は?


例年,この質問が多いのですが,人それぞれで,としかいいようはありません.
テキストは重要ですか?という質問もよく受けますが,それはもちろん重要でしょう.(たぶん,質問の趣旨は,テスト勉強で教科書は重要か,という意味かとは思いますが.)
テキストは,一通り目を通すのが理想です.もちろん,重要なことが書かれていますから.ただ,今の時点では,とりあえずスルーしてもいいところもあるかとは思います.テキストの文言をよく読むと,どうして?って言う箇所が出てくることもあるでしょう.あるいは説明不足だったり,重要事項ではあるが,テキストでは触れていないこともあります.講義や,補助プリントは,それらを補うものです.
私も,何十年か前の自分の大学時代を思い返せば,無機化学ってなんてつまらないんだろうという記憶しか呼び起こせません.ただ,無機化学という学問が,例えば薬学において単独で存在するのではなく,いろいろな科目の基礎となり,また,化学的思考をトレーニングするのに適した科目であるのは間違いありません.特に,高校での学習内容とのつながりもありますから.高校の延長で講義がつまらない,という声を最近聞きました.そういう方は,ぜひもっと高いところを目指してほしいです.講義資料の一番下に,参考図書を紹介していますし,MITのオンライン講義も紹介していますので,ぜひのぞいてみて下さい.
後は,過去問題,演習問題,あるいは,ビデオの問題を問いて,知識の再確認をして下さい.

Q.期末試験の範囲は決まっていますか?


A. 講義で触れた(る)部分全範囲です.少しずつ,復習されていくほうがよろしいかと思います.ただし,13回目,14回目の内容は,講義進度にもよりますので,改めて通知します.

Q.化学式を書くのに,どのようなソフトで書いていますか.

A. ChemDrawというソフトです.(Perkin Elmer社).業界の標準ソフトです.個人で購入するとアカデミックアカウントを利用しても,2万5千円程度します.しかし,静岡県立大学は,サイトライセンス契約をしていて,大学のメールアドレスを所有しているものは,一定の登録手続きをすれば,フリーで使用できます.(若干,英語の読解力必要).また,個人のPCにインストールできます.(Windows版,Mac版どちらもあります).インストールマニュアルをpdfファイルにしましたので,興味のある方は,御覧ください.なお,ChemDrawの使用方法に関しては,後期の科学演習で,演習する予定です.それ以外にも,フリーの化学構造式描画ソフトがあります.一長一短ですが,pdfにまとめておきました.pdf

Q.第二回課題の2番の問2が全くわかりません.

A.(ヒント)この反応系において,過剰に存在する化学種はなんですか?
       ジボランは,水と反応し,ホウ酸となることを講義で説明しました.
       これは加水分解反応ですね.
       ホウ素がsp2混成軌道で,空のp軌道を有していることから,ここにローンペアが配位することは誰でもわかることです.
       では,この反応系中で,ローンペアを配位できるものは?特に過剰にいるものは?配位した後,どうなる?
       講義を理解していれば推測できるかと思います.
       このように,種々の条件を考慮し,答えを出すことが求められていることです.単に知識を記憶するだけでは今後行き詰まるでしょう.
       しっかり採点するので,答えをそのまま教えられませんが,迷ったら,推測過程を記述しておいて下さい.
       用紙足りなければ,別紙添付で構いません.


Q.無機医薬品などに興味を持ちました.さらに学習するためになにか良い本は有りますか.

A.特に金属と医薬品との関連で,学習されるとよいかと思います.
とりつきやすいのは,講談社のブルーバックシリーズで出版されている,「金属は人体になぜ必要か」(桜井弘 著)です.
少し古い本ですが,図書館にあります
ネットでもいろいろな記事がありますが,例えば,以下のアドレスから参照できる記事などを読んでみるのはいかがでしょうか.
http://www.tcichemicals.com/ja/jp/support-download/chemistry-clip/PDF/2013-07/158yomo(J)-02.pdf
「医薬品と元素」という題で佐藤健太郎氏が書いたコラムです.しっかりした内容ですので,参考になるかと思います.
薬剤師を目指しているなら,スタンダード薬学シリーズ3 化学系薬学 I. 化学物質の性質と反応 日本薬学会編 東京化学同人 .


Q.6配位化合物は,正八面体型錯体だけですか.また,6配位以上は可能ですか.


A.6配位錯体は,正八面体以外に,三角柱型もあります.(trigonal prism).
 また,中心の金属が原子番号の大きい金属であれば,7配位(d3sp3,双五角錐)や8配位(d4sp3,十二面体)なども知られています.
 それほど大きくない金属の場合,自分の周りに6個のリガンドを配置すると,もう立体的な余裕はなくなります.


Q.結合とか,混成軌道などが今ひとつ理解できません

A.これらは,化学の基本ですから,今のうちにしっかり学習しておく必要があります.
基礎化学という講義が開講されていますから,そこでしっかりと学んで下さい.