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天然物のキノロン骨格を一段階の反応で作り出す新規酵素をカビから発見することに成功

 

本学薬学部 生薬学分野 渡辺 賢二 教授と同 生命物理化学分野 橋本 教授らは、ヘモシアニンに似た酵素が二次代謝物の生合成に関わり、これまで不明であった天然有機化合物「ビリジカチン」類の生合成経路において、その化学構造に含まれる「キノロン骨格」が、一つの酵素による連続的な作用により形作られることを世界で初めて明らかにしました。これら発見した酵素を人工的に改変することで、将来的には有機化合物の構造を自在に変換できる触媒を創製することが期待されます。

 

「キノロンアルカロイド」類は抗菌、抗ウイルス、抗マラリアおよび抗腫瘍といった多くの有用な生物活性を示すことが知られ、また、これらの天然有機化合物は様々な生物種から単離されてきました。中でも「ビリジカチン」類は、その化学構造中に特異な6,6-キノロン骨格を有するため、これらが一体どのように作られるのか興味が持たれていました。本研究では、そのビリジカチンの構造中に含まれる6,6-キノロン骨格について、ヘモシアニンに似たシクロペナーゼという酵素が持つ亜鉛結合ドメイン中において基質シクロペニンのカルボニル酸素とエポキシドに亜鉛イオンが配位して活性化し、脱芳香化して新たな6員環がまず形成されることを明らかにしました。続いてメチルイソシアネートが脱離して再芳香化が起きた後、ケトエノール互変異性によりビリジカチンが生成するという反応機構を突き止めました。本来昆虫などが酸素運搬に利用するヘモシアニンが微生物にも存在し、一般にヘモシアニンでは銅である金属原子が亜鉛に置き換わって、酸素運搬ではなくキノロン骨格形成反応を触媒することを明らかにしました。今後、こういった酵素群を調べることでこれまでにない新しい触媒機能の発見が期待されます。

 

本成果は、本学薬学部 生薬学分野の渡辺 賢二 教授、岸本 信治 特任助教、平山裕一郎 特任助教、本学薬学部 生命物理化学分野の橋本 教授、原 幸大 助教および、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA) Ken Houk教授、Yi Tang 教授による文部科学省 新学術領域研究(研究提案型)平成28~32年度「生合成リデザイン」プログラムによる国際共同研究の成果です。科学分野において権威のある国際科学雑誌「Nature Communications(Impact Factor: 12.124) 電子版に2018720日付けで掲載されました

 

2018 0719 fig

 

〈掲載された論文〉

Enzymatic one-step ring contraction for quinolone biosynthesis

Shinji Kishimoto, Kodai Hara, Hiroshi Hashimoto, Yuichiro Hirayama, Pier Alexandre Champagne, Kendall N. Houk, Yi Tang, Kenji Watanabe

 

関連リンク:

SPRINGER NATURE    

https://www.nature.com/articles/s41467-018-05221-5

 

静岡県立大学 薬学部 生薬学研究室

http://sweb.u-shizuoka-ken.ac.jp/~kenji55-lab/

 

静岡県立大学 薬学部 生命物理化学研究室

http://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/bukka/

 

静岡県立大学薬学部・薬学研究院

〒422-8526

静岡県静岡市駿河区谷田52-1 

電話 054-264-5102