医薬品の源を天然物に求めて

今日、日本では数千種類の医薬品が使われていますが、今なお優れた新薬が求められています。新薬の開発は薬学人の課せられた一つの使命です。こうすれば必ず出来るという方法は、残念ながらありませんが、有用な物質を見出すことがその一つの出発点であることに異論はないようです。特に天然からはこれまでにも多くの薬やその素材となる化合物が得られています。そこで、私たちは天然物を基に新薬開発に繋がる興味ある生物活性物質を探索しています。

 1)多くある医薬品の源泉は生薬などの天然物として効果があったものから得られています。生薬は人類の長い歴史の過程で、試行錯誤を重ねながら経験的に見出されてきた優れものですが、その有効成分については未解決のものが多く、より詳細な解析と進歩した分離技術を織りまぜ、それらを明らかにしていきます。

 2)生物に何らかの作用を及ぼす生物活性物質は私たちの利用の仕方により薬にもなり、毒にもなります。毒の場合は公衆衛生、環境問題の観点から監視する必要があるとともに、選択的な作用機序を示す物質であれば生命現象を解明するための鍵物質として利用することができます。私たちは海産毒、発癌プロモーター等の分析法の確立や単離・構造決定を行っています。

実際の単離、精製はゲル濾過やODS等の各種クロマトグラフィーを用いて行い、得られた活性物質はX線結晶解析あるいはNMRスペクトルの解析によって構造を決定します。また定量等の分析はLC-MSを用いて行います。さらにより効果的な化合物を創製する為に、関連化合物の合成および作用機序の解明等の研究を行います。

現在行っている研究テーマ

茶成分の有効利用に関する研究
抗アレルギー作用を有する植物成分の分離、構造決定及び活性試験
アケビ中に含まれる成分の構造解析及び活性試験
ヒアルロニダーゼ阻害活性を有する植物成分の分離及び構造決定
生理活性高極性配糖体を含む植物の医薬品資源的研究
美白作用を有する植物成分に関する研究
抗ピロリ菌活性を有する化合物の研究
PAF合成酵素阻害作用物質の構造解析
W型アレルギー病態モデルで有効な生物活性を有する動植物成分の分離及び構造研究
慢性ストレス障害に有効な生物活性を有する動植物成分の分離及び構造研究
生物活性を有する動植物成分の合成研究
創薬を目的とした強力な抗炎症作用物質Chafurosideおよびその関連フラボノイドに関する研究