![]() |
||||
エステル類は工業的にも生物学的にも重要な化合物である.エステルを合成する最も一般的な方法はこの実験に用いるFischerのエステル化であり,一般に酸触媒の存在下,カルボン酸とアルコールを加熱還流する方法が採用される(「現代有機化学」上,9章,下19章).この反応は平衡反応であり,反応は定量的には進行しない.この平衡は生成する水を除去すれば生成系にずらせる.一方の反応剤(本実験ではアルコ−ル)を過剰用いる方法もある.酸無水物あるいは酸塩化物とアルコールとの反応もエステルを合成法として重要である(これらは非可逆的であり,等モルの反応で収率良くエステルを生成する:「現代有機化化学」下,19章). 本実験では,Fischerのエステル化法を用いて安息香酸メチルを合成する.安息香酸メチルはちょうじ油などに含まれる快香性無色液体(沸点199.5 ℃)で,香料,溶媒などとして用いられる.この実習では,次のような操作をマスターする. 加熱還流,抽出,飽和食塩水洗浄,酸性物質と中性物質の分離,液体の乾燥,高沸点化合物の常圧蒸留 本実験で合成した安息香酸メチルは,実験6におけるGrignard反応の原料となる.よって,充分に純度の高いものを,必要量合成しておかないと,以後の実験が出来なくなるので注意が必要である. |
||||