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がん治療では、抗がん剤や放射線治療の副作用としてしばしば口腔粘膜炎(口内炎)が生じます。口腔粘膜炎は痛みを伴い、食事や睡眠に支障をきたすことで患者さんのQOL(生活の質)を低下させたり、十分な栄養が摂れず体力が低下することがあります。そのようなことから、がん治療の継続が困難になる場合すらあります。現在、口腔粘膜炎の予防には、適切な口腔ケアに加え、うがい薬を用いた対策が行われています。その一つとして、「レバミピド含嗽液(うがい薬)」が、がん化学療法や放射線療法による口腔粘膜炎の予防を目的に、一部の医療機関で院内製剤として使用されています。
私は、山梨大学医学部附属病院との共同研究として、レバミピド含嗽液について研究しています。レバミピド含嗽液は病院で調製される院内製剤です。一般的に院内製剤は、市販薬と比べて製剤特性や保存中の安定性に関するデータが十分ではない場合があります。そのため、安全かつ適切に使用するためには、製剤特性を評価することが重要です。また、レバミピドには苦味があるため、患者さんが継続して使用しやすい製剤であるかを評価することも重要な課題です。
今回の学会では、レバミピド含嗽液の製剤特性と使用感について研究した成果を発表しました。製剤特性の評価では、分析機器(HPLC)を用いてレバミピドの含量を測定し、温度や光などの保存条件が製剤特性に及ぼす影響を調べました。また、使用感の評価では、実際に頭頸部がんでレバミピド含嗽液を使用している患者さんを対象に、味や使いやすさなどについてアンケート調査を実施しました。その結果、適切な条件で保存することでレバミピド含嗽液の製剤特性を維持できる可能性が示されました。一方、使用感については評価が良い患者さんと悪い患者さんの両方がおり、より多くの患者さんが使いやすい製剤とするためには、さらなる改良が必要であることが分かりました。今後も、患者さんが安心して使用できる製剤の開発・評価を進め、より良い薬物治療に貢献することを目指しています。
内山(6年生)
永井晶大1,2、河本小百合1、三浦基靖1、安室修1、鈴木貴明2、内田信也1
1静岡県立大学薬学部実践薬学分野、2山梨大学医学部附属病院薬剤部
私は、臨床試験において紙で記録されたアンケート回答を、生成AIを使って電子データ化した時の精度について発表しました。
病院や薬局などの医療現場では、新しい薬や治療法が安全で効果があるかを人で確かめるための試験が行われています。これを臨床試験といいます。臨床試験では、紙媒体を用いて患者さんの体調や症状を調査することが多く、その情報を研究や解析に利用するためには、紙に書かれた内容を一つひとつパソコンに入力し直す必要があり、多くの時間と労力がかかります。
そこで私は、近年急速に発展している生成AIに注目し、生成AIが紙の記録用紙をどの程度正確に電子データへ変換できるのかを検証しました。研究では、杏林堂薬局にて薬の副作用を調査した記録用紙を使用しました。まず、AIが正確に電子データ化できるよう、AIへの指示の出し方やデータの出力方法を工夫しました。そのうえで、記録用紙をスキャンしてAIに読み込ませ、回答内容を表計算ソフトで利用できるデータとして出力させました。そして、AIが読み取った内容と研究者が目視で記録用紙を確認した内容を比較し、AIの読み取り・出力精度を評価しました。
その結果、生成AIは98.6%という高い精度で回答内容を正しく読み取ることができました。また、記録用紙への記入の仕方に問題があるもののうち、73%はAIが適切に自己判断し、人が目視で記録用紙を読み取った結果と同じ内容を出力できていました。
以上の結果より、生成AIはデータ入力作業を支援する補助ツールとして活用できる可能性が示唆されました。今後はさらに精度を向上させる方法を検討し、データ入力にかかる時間や手間を減らすことで、臨床試験をより効率よく進め、新しい薬や治療法をより早く患者さんに届けることにつなげていきたいと考えています。
望月(6年生)
三角孔史郎1,2、三浦基靖1、河本小百合1、邑瀬誠2、深津英人2、安室修1、内田信也1
1静岡県立大学薬学部実践薬学分野、2株式会社杏林堂薬局
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私は、プレドニゾロンという薬を使った「ミニタブレット(小さな錠剤)」を病院や薬局で作る方法と、その品質について発表しました。
プレドニゾロンは、子どもの腎臓の病気である小児特発性ネフローゼ症候群などの治療に使われる大切な薬です。しかし、強い苦みがあるため、飲み続けることが難しい患者さんも多くいます。
そこで私は、薬剤師が病院内で簡単に作れる小さな錠剤を目指し、ミニタブレットの作製方法を検討しました。研究では、小型の打錠機(錠剤を作る機械)と、料理用のヘラを使ってミニタブレットを作製しました。また、作った薬について、薬の量が均一に入っているか、体の中で適切に溶けるか、運搬中に壊れないかなどを確認する試験を行いました。その結果、必要な基準を満たしており、患者さんに使える可能性がある品質のミニタブレットを作れることが分かりました。
今後は、味をつけるなど薬の苦みを感じにくくする工夫を加え、患者さんがより飲みやすい薬へ発展させることを目指しています。
青木(6年生)
河本小百合1、三浦基靖1、杉山育美2、内田信也1
1静岡県立大学薬学部実践薬学分野、2岩手医科大学薬学部医療薬科学講座創剤学分野
高齢者や小児の中には、通常の錠剤を飲み込むことが難しい人がいます。そのため、直径4 mm以下の小さな錠剤である「ミニタブレット」が注目されています。ミニタブレットは飲み込みやすいだけでなく、服用する錠数を変えることで患者さん一人ひとりに合わせた細かな量の調整ができるという利点があります。しかし、実際に医療現場で使用するためには、すべての錠剤に同じ量の薬が含まれていることや、病院や薬局で普段使われている機械で問題なく扱えることを確認する必要があります。
そこで本研究では糖尿病治療薬であるミチグリニドを用いてミニタブレットを作製し、その品質を評価しました。その結果、製造したミニタブレットにはほぼ同じ量の薬が含まれていることが確認されました。また、薬は水の中で5分以内にほぼ100%溶け出し、速やかに効果を発揮できる可能性が示されました。
さらに医療現場における実用性の評価を行うために、病院や薬局で薬を1回分ずつ袋に分ける分包という作業のために使われている機械を用いて試験を行ったところ、1500回の分包のうち1包のみ規定量より1錠多く入ってしまうというエラーが起こりました。この結果から、作製したミニタブレットは現在の医療現場の設備でも問題なく扱える可能性が示されました。
以上より、ミチグリニドをミニタブレット化しても十分な品質を保つことができ、実際の医療現場で利用できる可能性が示されました。将来的には、高齢者や小児など薬を飲み込みにくい患者さんの服薬を支える新たな選択肢になることが期待されます。
石坂(6年生)
三浦基靖1、大森浩明1,2、中井結奈1、河本小百合1、内田信也1
1静岡県立大学薬学部実践薬学分野、2キッセイ薬品工業株式会社製薬本部製剤技術部

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私はレボフロキサシンによる中毒症状が疑われた症例に対して、血液中の薬物濃度を測定し、薬物が体内でどのような動きをするのかを解析した結果について発表しました。血液中の薬物濃度を測定し、論文や添付文書に記載されている血中濃度と比較することで、薬と薬物中毒の因果関係を調べることが出来ます。本研究は、静岡県にあるコミュニティーホスピタル甲賀病院との共同研究です。
レボフロキサシンは主に肺炎の治療で用いられる抗菌薬の1つです。薬は身体が処理できる一定の量を超えてしまうと、体内の処理システムが追い付かなくなります。その結果、想定を遥かに超えた反応が身体に現れることがあり、これを薬物中毒といいます。レボフロキサシンにも薬物中毒症状があり、身体が勝手に動いてしまう、無いはずのものがそこにあるように見えるなどが報告されています。
今回の80歳男性患者は、これらの症状が発現して抗菌薬による中毒症状が疑われました。そのため血液中の薬物濃度を測って、レボフロキサシンとそれによる薬物中毒症状の関係を調べました。その結果、この患者の最高血液中濃度は健康な成人における最高血液中濃度と比べて高いことが分かりました。このことから、レボフロキサシンが中毒の発症に関係した可能性が考えられました。
畠山(6年生)
三浦基靖1、石田光稀1、河本小百合1、山ア直子2、渡邉学2、森晴菜2、山内滋2、内田信也1
1静岡県立大学薬学部実践薬学分野、2コミュニティーホスピタル甲賀病院
