本学薬学部 渡辺 賢二 教授、岸本 真治 講師、薬学部修士2年生南歩実さんのグループは、生物がアズラクトンを作るメカニズムの解明に成功しました。
アズラクトンとはアミドのカルボニル酸素が同一分子内のカルボニル基とエステル結合した含窒素5員環ラクトンのことであり、共鳴安定化により4位水素が容易に脱離するという性質を有する。従ってペプチド合成においてアズラクトンが生じた場合、アミノ酸のα位のエピ化の要因となることが広く知られている。また、アズラクトンは4位水素の脱離で生じる負電荷により求核性を有しているだけでなく、5位のカルボニル炭素が求電子性を有していることから高い反応性を有している。そのため一部の安定なアズラクトンを除き、有機合成の途中で生じても単離されることはない。このような反応性に富んだアズラクトンは天然ではこれまでに見出されてこなかったが、我々は糸状菌Aspergillus lentulusの生産する新規化合物lentofuranineとfumimycinの生合成研究の過程でアズラクトンであるfumarylazlactoneが生合成されていることを直接観測することに成功した。この世界で初めての発見によって天然ではごくありふれた酵素を使って天然物の複雑な化学構造にさらに多様性を与えていることを明らかにした。
本成果は、化学分野において最も権威のある国際化学雑誌「Journal of the American Chemical Society」(Impact Factor: 16.383) 電子版に2023年1月27日付けで掲載されました。
〈掲載された論文〉
Reactive azlactone intermediate drives fungal secondary metabolite cross-pathway generation
Shinji Kishimoto, Ayumi Minami, Yoshimitsu Aoki, Yuya Matsubara, Shogo Watanabe and Kenji Watanabe
関連リンク:American Chemical Society
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.2c13188