抗体医薬の分析法開発

2016年修士卒 中野達基

現在、抗体医薬のような

高分子医薬品の分析には、主にELISA法が用いられています。ELISAは高感度かつハイスループットな分析を可能としますが、交叉反応の可能性や分析精度で問題が指摘されることがあります。そのため、ELISAに代わる特異性かつ信頼性の高い分析法の開発が望まれています。
 私は、低分子医薬品分析に用いられているHPLCを抗体医薬の分析に利用する方法を開発しています。HPLCを利用して分離することで、より精度の高い分析が可能となります。開発している方法の特徴を以下に示します。

1.前処理:分析を行うためにまず、IgGが多量に存在する血液試料の中から抗体医薬のみを選択的に捕集する必要があります。
 ⇒抗体医薬の特異的抗体を使用することで、目的物質を選択的に捕集することができる。


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2.分離・分析:従来、抗体医薬を直接HPLC分析した際にはブロードなピークしか得られなかったため、他成分との分離が難しいとされていました。
 ⇒特殊なLC条件を設定することでシャープなピークを得ることができる。

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2015.04.16


糖鎖の高感度分析を指向とした誘導体化試薬の開発

2015修士卒 永井啓裕

糖鎖とは、

単糖が鎖状に連なったものであり、細胞接着や抗原抗体反応、ウィルスの感染など細胞間のコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を担っています。また、最近の研究では、糖鎖と疾患との関連性が明らかになり、細胞のがん化や関節リウマチのバイオマーカーとして非常に注目されています。そのため、糖鎖機能解明のための技術基盤として高感度な糖鎖分析法の開発が強く求められています。
私は、糖鎖をラベル化する際に用いる誘導体化試薬の考案・合成を行い、新たに4種類の誘導体化試薬を開発しました。そして、これらの誘導体化試薬を用いることで、従来よりも高感度な糖鎖分析法を確立することを目指し、研究を行っています。


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2014.06.20


「フルオラス分離技術を応用した分析技術」と「醤油中ヒスタミン・チラミンの簡易分析法」の開発

2015修士卒 石井裕大

ある化合物を分析するには,

目的の化合物だけをその他の夾雑化合物から分離するという技術が必要不可欠となります。
 一般的に化合物の分離には,沸点,溶解度,吸着,極性,官能基などの様々な性質が利用されていますが,私達はフルオラスと呼ばれる特殊な相互作用に注目して研究を行っています。この相互作用は,パーフルオロアルキル基をもつ化合物が,同じくパーフルオロアルキル基をもつフルオラスシリカゲルに対して特異的に保持されるというものであり,この性質をうまく利用することで,光学異性体の分離デバイス(K. Todoroki and Y.Ishii et al., Anal. Bioanal. Chem., 405, 8121 (2013), K. Todoroki and Y.Ishii et al., Anal. Chim. Acta, in press)や,化合物を選択的に分析する技術の開発を行っています。
 また,企業との共同研究で醤油中からアレルギー性物質であるヒスタミン(Him),チラミン(Tym)を高選択的に分離精製することのできる液-液抽出法を開発し,実際に醤油中のHim,Tymをモニタリングすることに成功しました。(K. Todoroki and Y.Ishii et al., J. Agric. Food Chem., 62, 6206-6211 (2014))


2014.07.23