大学院特別講義
日時: 令和7年4月25日(金)13:30 〜15:00
場所: 静岡県立大学 小講堂
世話教室: 免疫微生物学分野
対象: 大学院生、学部生、教職員等、学外者からの参加も歓迎します。
演 題:消化管恒常性の維持機構の解析
演 者:竹田 潔 先生
大阪大学医学系研究科 免疫制御学 教授
大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)拠点長
講演概要:
腸管(小腸および大腸)は、腸内細菌という異物が多数存在しているユニークな臓器である。免疫系は、細菌などの異物を非自己として認識し排除するシステムであるが、腸管では免疫細胞が多数存在しているにも関わらず、腸内細菌に対して反応をすることなく、腸管の恒常性が維持されている。このバランスが崩れて、腸管の免疫系が腸内細菌を攻撃することにより、クローン病、潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患が発症する。炎症性腸疾患は、近年我が国で患者数が急増している難治性の疾患である。私たちは、腸管の免疫系の活性制御機構および腸管上皮による腸内細菌の宿主侵入抑制機構などに着目し、腸管の恒常性維持機構をマウスモデルおよびヒトの炎症性腸疾患も対象として解析している。
そして、腸内細菌が免疫系に晒されないメカニズムとして、腸管上皮細胞が産生する分子(Lypd8)による新規バリアメカニズムを明らかにした。また、Lypd8 などによる分子により直接宿主細胞と接することなく腸管腔内に棲息している腸内細菌が宿主に作用するメカニズムとして、腸内細菌叢依存性に腸管腔内で産生される分子の宿主作用機構についても解析している。その結果、アデノシン3リン酸、乳酸、ピルビン酸などの宿主細胞への作用機構を明らかにしてきた。さらに、クローン病の病態における代謝物の意義についても明らかにしてきた。
このように、腸管の恒常性は、腸内細菌と免疫系の相互作用、そしてその制御により、見事なまでに維持されている。本講演では、腸管の恒常性の維持機構について議論をしたい。
問い合わせ先・連絡先:
静岡県立大学 薬学部 免疫微生物学分野 梅本 英司
Tel: (054) 264-5716
E-mail: eumemoto@u-shizuoka-ken.ac.jp