本学薬学部 砂川 陽一 講師、刀坂 泰史 准教授、清水 聡史 助教、森 潔 特任教授、森本 達也 客員教授らの研究グループは、心不全発症・進展に対するNobiletinの心保護効果とメカニズムを解明しました。本成果は循環器分野において権威のある国際紙『Hypertension』(Impact factor:8.6) 電子版に2025年11月21日に掲載されました。
【論文タイトル】
『Nobiletin Prevents Cardiac Hypertrophy via SIRT5-Mediated Downregulation of p300』https://doi.org/10.1161/HYPERTENSIONAHA.125.25083
【概要図】

【本研究成果のポイント】
- Nobiletinは圧負荷による心筋肥大、心機能低下を抑制
- プローブ化Nobiletinを用いた手法により、Nobiletin標的因子としてSIRT5を同定
- NobiletinはSIRT5を活性化させ、p300の脱スクシニル化を誘導することでp300のヒストンアセチル化酵素活性並びにGATA4依存的な心筋肥大反応を抑制
- 心不全の発症・進展を予防する天然由来機能性成分として、Nobiletinの臨床応用へ発展することを期待
【概要】
Nobiletinは柑橘系果皮に含まれるポリメトキシフラボノイドであり、抗酸化作用や認知機能改善作用を有するなど、健康に寄与する機能性成分として注目されています。研究グループは心不全発症の要因の1つである心筋細胞肥大を指標に天然物ライブラリーからスクリーニングを行い、Nobiletinを見出しました。そして、Nobiletinが圧負荷による心筋肥大、心機能低下を有意に改善することを、マウスを用いた研究により明らかにしました。また、抗老化遺伝子ファミリーの1つであるSIRT5がNobiletinの標的分子であること、NobiletinがSIRT5の活性化/p300のアセチル化活性の制御を介して心筋細胞肥大や心不全の発症・進展を抑制することを、SIRT5の遺伝子改変マウスを用いて明らかにしました。本研究成果により、Nobiletinを用いた心不全発症・進展に対する予防戦略に発展することが期待されます。
【特記事項】
本研究は、静岡県立大学、東海大学、兵庫県立大学、京都大学、国立病院機構京都医療センターとの共同研究にて実施されたものです。また、本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業(砂川陽一; 23K06098, 19K16396, 森本達也; 20K07070, 長谷川浩二; 18K08121)、武田科学振興財団研究助成(砂川陽一)、公益信託 循環器学研究振興基金(砂川陽一)、日本心臓財団研究助成(砂川陽一)からの支援を得て行われました。
